中国旅行

青銅峡108塔

寧夏回族自治区呉忠市青銅峡市・一百零八塔

内蒙古自治区の大草原ツアーを目的にしたこの旅行、ついでにもう1ヶ所という気分で呼和浩特から夜行列車で寧夏回族自治区の首府銀川に到着したのは早朝5時過ぎ。

近年の経済発展からするとやや遅れている地域ですが駅は首府の面目を保った規模で、中国の公共施設のご多分に漏れずデカくてユーザーフレンドリーじゃない造り。2020年後半には西安からの高速鉄道が開通します。今12時間かかっている道程が3時間台になるとかなんとか。
まだ夜明けの薄明るい広場にはすでにガスコンロを積み込んだやや危険な乗り物で乗り付けて朝飯を販売する一角があります。公衆便所の前に集っているのは水道水を得やすいからでしょうか。友人が便所に入るなり逃げ出してきたところを見ると中は凄まじい状態だったんでしょう、なんか食い物を買う気も失せました。

銀川では西夏王陵という中国のピラミッドを目当てに来たのですが、早朝から無為に数時間潰すのはもったいないと、昨晩から友人が一百零八塔という名勝を調べて行きたそうにしていたので、このまま朝6時のローカル列車に乗り最寄駅に向かう事になりました。

乗った列車は本物の普通列車。地元民しか乗らないローカルな雰囲気で、回族の地域なのでイスラム教徒も多いです。エアコン無しの旧型車両なので運賃も激安でたった4元。しかし便所は恐れていた状態ではなく無事使用でき安心しました(停車中を除く)。

駅

60kmくらいの距離をゆっくり走って停まって、また走り出して合計2時間ほどかかりながら青銅峡駅に到着しました。長い歴史の中で、この駅を利用した日本人って片手で足りるくらいの数なんじゃないか、と思わせるほど想像以上に何もないこの駅前からは一歩も先へ進めそうもない雰囲気を感じます。

路線バスの気配すらしない小雨の駅前ロータリーをぼーっと眺めていると客引きに集まった白タクがどんどんと発車していくので、友人が慌てて最後の一台を捕まえに行きました。役に立たない私はその間すぐそばの雑貨屋へ安い傘を買いに行っておりました。

運転手は声が大きめで押しの強そうな中年女性。確か60元くらいで交渉成立したようですが、中国の地図アプリで調べたところ駅から1時間くらいかかると出ていたので安いもんだろう…

10分で着いた。

「近え…」、どうやら塔か駅の位置情報がバグっていたようです。これだから中華アプリは…ちょっと待って、車代払いすぎたじゃない。

ここは青銅峡黄河大峡谷旅遊区に属し、水利施設見学や黄河クルーズなどと包括的な観光ができますがとりあえず雨の平日の朝イチ、客はロクにいません。

青銅峡108塔

11世紀半ばから13世紀初め今の銀川を首都とした西夏王朝が栄えました。彼らはチベット仏教を信仰しており各地に仏教寺院を建立しました。この塔も西夏時代に建立されたチベット仏教のストゥーパで、インド仏教の原型を留めた古風な形体だそうです。歴史の荒波により風化したものを近代になって修復・復元したものと思います。

108個の煩悩の話は日本でも広く知られていますが、この塔も時計周りに数周すると煩悩が去り幸福が訪れるとの事でした。ただ結構な高低差があるこの階段を何度も昇降するのは、五体投地レベルには及ばないにせよまあまあ苦行と思われます。ここで信念を見せなかったからか、数日後に上海からの帰国便に乗り遅れるという不運に見舞われて心と財布に甚大なダメージを受けました。

もちろん寺院なので仏殿もあります。中華圏の仏像は得てしていつも金色に輝やいておりますが、屋外に建立されているものはなにかこう…品のない金ピカさで、土産物屋で売っているフィギュアのようです。

日本では時間と共に味わいを増した仏像や建築物の侘び寂びを大事にするので、あまりに色鮮やかだと安っぽく見てしまうきらいがあります。ひとたび平等院鳳凰堂のように修復で当時を再現したりすると「朱い、朱すぎる!」とか言われるんです。

せっかくなので黄河の船着き場まで行ってみました。ここから乗船して蛇行する黄河を少し遡上するコースのようです。こんな悪天候でも5〜6人のグループが乗船目当てにやってきましたが、我々は次の行程があるので乗らずに戻る事にしました。

友人の思いつきのおかげで、意外な観光ができて一仕事終えた感満載でしたが、まだ午前10時過ぎです。これから当初の目的地を目指して銀川市へ戻らなくてはなりません。

運転手大姐は駅とここまでの往復で60元という解釈だったようですが駅に戻ってもそもそも列車の本数が少なくて使えないので、じゃあ街中のバスステーションまで行けーと言うと結構遠いから150元にしろと。まあ確かにここで乗り捨てたところで右も左も分からないので交渉するしかありません。130元で手を打ちました。

走行中に彼女は我々をどこかへ連れて行きたそうに話かけるのですが、訛りがきつくて脳内に漢字が書き起こせず何度目かの勧誘でやっと「黄河楼」という場所と判明しました。まあ乗りかかった船だしOKしたら「寄り道になるからプラス50元」だと。

見たところなんか市民団体が「税金がー」と文句をたれそうな客寄せ用の箱モノです。この一帯を市政府の肝入りで開発してる事はそばに公園と新スタジアムを整備中の様子からも想像できます。ちなみにここは呉忠市という行政区で、青銅峡市はその中の一つの市です。なので寧夏回族自治区呉忠市青銅峡市という風に日本では聞き慣れないダブル市表記となります。

この塔は全部で8階建てくらいだったかな(うろ覚え)。期待も時間も無いのでチケットを買ってエントランスからすぐにエレベーターで最上階展望台まで上がって黄河を眺めましたが、なにぶんこの天気なのでもうどこからどこまでが河なのかはっきりしませんね。

どうやって地上に戻ったかもあやふやですが、確か途中の階には西夏文化を紹介する展示フロアが続き、彼らが独自の文字を持とうという願望を成就させて生み出した西夏文字という、漢字にややヘヴィメタルを加味したような文字の紹介に注力しているようでした。

で、表で待っていた例の車に乗り込み、青銅峡市汽車駅(バスターミナル)まで行って合計180元(3,000円弱)になりました。向こうにすればなかなかの収穫だったに違いありませんがこちら二人もこの金額で車を3時間チャーターしたと考えると別に悪くない、win-winです。

近郊都市への公共交通はバスが主力で、特に首府銀川とを結ぶ便は20〜30分毎に発車していて便利この上ないので、わざわざ火車駅(鉄道駅)で降りる意味はないのですが奥地のローカル列車体験は記憶に残るイベントです。

一番早いバスの切符を取り一番早く銀川へ向けて出発したものの、ちょっと神経がアレなオバちゃんが何か知らんが運転手に食って掛かり大声で喚き始め、バスは発車早々に停車してしまいました。彼女に強制退場を食らわすまでに、次発のバスに追い越されていくという理不尽さもこの国の味です。

青銅峡一百零八塔
公共交通機関でのアクセスは不能 市内で車をチャーター

旅行期間:2017年初夏