中国旅行

マイナー古鎮

安徽省黄山市徽州区・呈坎

黄山強制登山の翌日、山上での散策時間に余裕を持たせるため上海へは17時頃の列車で戻る事にしてましたが、運行中のロープウェイ駅を目指しながら駆け足に見処を巡った結果、無駄に時間が余ってしまいました。

新設の高速鉄道駅は市街を外れた辺鄙な場所に作られるのが宿命です。そこでタクシーで黄山の市街地へ行き、食ったり買ったりして時間を潰そうと考えました。黄山北駅のタクシー乗り場には目的地への料金例が明示されていますので安心できますが安心はできません。

運転手は車を走らせながら「市内へ何しにいくんだ?」と聞いてきますので理由を告げますと、おもむろに車を路肩に停め、ダッシュボードからパンフレットを取り出したかと思うと「市内なんかつまらないぞ、ここへ行こう」などと女性を連れ込むが如くの営業を始めました。全くこの惑星の運転手というものは…

どうやら古い家並が残る村落に連れて行きたいようです。この黄山の周辺には宏村や西递という世界遺産登録もされている村落があり、黄山とセットで観光されるほど有名ですが、同じタイプの古鎮は周囲あちこちにもあります。時間内に回ってこれるし料金が高いわけでもないし、友人は決断を私に丸投げしました。

結局口説かれました。

黄山方面に戻るような方角に30分くらい走ったところにある呈坎(chengkan)という村です。運転手は観光中ずっと駐車場で待ってくれるそうですが、今回は荷物を人質に取られていないし、車代はまだメーター継続中で未払いだし、放っておいてこっそり別の車で帰ったら面白いのにな…

入場料を窓口で払いますが、パンフレットで見た金額より高いです…私の見間違いかそれともアイツ古いパンフレットで誤魔化しやがったのか…いずれにせよアイツは観光地からキックバックを受け取るのは確かですね、商魂逞しい。

この村は風水の里で、その歴史は1,800年以上にも及びます。三国時代に諸葛亮の兄である諸葛瑾は呉国の重鎮でした。彼と呂蒙という名将でこの地を平定した後、ここが小さな盆地で農耕や漁猟に便利な事に加え、四方の山々の位置や昇龍に見える河流が天然の八卦図である事が重視され集落が起こりました。そして建物も八卦図に準じて配置し、村名を「龍渓」としました。

村落の中心となるのが池です。この時期は汚い枯れ葉しか見えませんが初夏には蓮の花で一杯になるんでしょう。

時代が下って唐代末期、戦乱を避けるため南昌にいた罗氏(学者筋?)の祖に当たる文昌公が風水に釣られて移住してきました。ついでに村名を呈坎に変更した(呈と坎は共におめでたい漢字)らしいです。この一族について調べるのは、平家の落人が山村で何をしてきたかを外国人が調べるくらい難易度が高いめんどくさいので割愛します。

ちょうど中国のカメラマニアがモデルをセッティングしての撮影会を開いていました。せっかくなので私も美女のショットを盗撮いただきます。

二昔前なら「退廃的」な事案としてお仕置きでしょうかね。

安徽省の徽を冠した徽式建築は中国でも超有名な伝統建築様式です。もちろん風水に準じた設計なのも特徴ですが、他にも採光や通風に対する工夫や精緻な装飾が施されております。明代以降ここ徽州が経済的に発展し文化が外へ伝わる過程でこの様式も各地に広がっています。蘇州や杭州などの古鎮もこの様式の建物で形成されていますので、自然と目にされている人も多いでしょう。
屋根の両脇から立ち上がっているのは马头墙(馬頭壁)と呼ばれる装飾及び防火防風の設備で、日本では卯建と呼ばれ、四国でしたっけ、有名な町がありますね。

池の周囲は建築物の保存と展示を目的とするエリアのようで、裏門から外に出ると生活と観光が共存するエリアに変わります。

迷路のような細い路地が張り巡らされています。そしてこの中のいくつかの古民家も参観スポットになっており、入場券に付属の副券で入館します。
地元の客引きもいます。残念ながら当時の語学レベルでは聞き取れませんでしたが、有料で自宅を見せるとか、民泊どうだ?とかですかね。

この村には三国時代、唐、宋、元、明、清に至る各時代の建築遺跡が180ヶ所以上現存しているそうで、中国随一の建築物博物館と謳われております。

孫を連れたお婆さんや川で洗い物をする村民など、まさかキャストじゃないよね。

中国各地どこかしこで「最も古い」「最も保存状態が良い」「最も模範的な」など枕詞をつけるものだから、一体どこが正統で価値があるのかさっぱり分かりませんが、とにかくこのタイプの村落が今の旅行者の心を掴んでいるのは確かです。

現代生活で失われた過去を遡って懐かしさや意外性に触れるという懐古趣味というものでしょうか、その気持ち分からないでもないです。私も近年やっと中国を旅行し始めましたが、まだ発展途上の無茶っぷりの中で打ちのめされてみたかったです。

さて、駐車場に戻るとアイツはちゃんと待ち構えていました。乗車してメーターを覗いたところ、到着時からあまり増えていませんのでインチキはされていないようです。それよりチケット売り場からのキックバックでウハウハでしょうか。我々は思いもよらなかった観光地を体験できたのでwin-winという事にします。

私が気づいていないだけで結構打ちのめされいるのかもしれません。

呈坎
高速鉄道黄山北駅から路線バスを発見したが徽州17系統直通または他系統途中乗継どちらもめっちゃ不便そう(遠回りすぎ&時刻と本数不明)なので、タクシー利用となる 料金は乗り場の掲示板か運転手にまず確認

旅行時期:2016年秋